甲状腺がんの治療と経過観察
甲状腺がんの治療
甲状腺がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤治療)などがあります。
悪性度の高い未分化がんを除き、多くの場合甲状腺がんの治療では手術が基本となります。
がんの分布や広がり、リンパ節転移の範囲、がんの危険度によって、甲状腺切除または、リンパ節郭清(気管周囲のみ、もしくは頸部リンパ節全体を切除)の
範囲が決められます。
1手術(外科治療)
声帯の運動をつかさどっている反回神経はなるべく温存しますが、腫瘍からうまく切り離すことができなければ切除します。また、頸部リンパ節への転移があれば、気管周囲もしくは頸部リンパ節全体を切除するリンパ節郭清術を行います。
甲状腺がんの手術では、切除範囲が大きければ大きいほど、甲状腺機能の低下(甲状腺ホルモンの分泌不足)、副甲状腺機能の低下(血液中のカルシウムの不足)、反回神経の麻痺(声のかすれ)など、さまざまな合併症を伴う可能性があります。しかし、甲状腺や副甲状腺機能の低下は、内服薬で補うことが可能です。
2放射線治療
放射線治療は、高エネルギーのX線やそのほかの放射線を用いてがん細胞が増えるのを抑え、がんを小さくする効果があります。
甲状腺がんの中では、未分化がんや悪性リンパ腫で外照射を行います。また、乳頭がんや濾胞がんで骨などに転移した場合には、痛みを抑えるためなどに外照射を行うこともあります。
また、乳頭がんと濾胞がんに限り、甲状腺の組織がヨードを取り込む性質を利用した、放射性ヨードの内用療法(アイソトープ治療)という、甲状腺がんに特有の放射線内照射治療も行います。
3ホルモン療法
甲状腺がんの治療では、甲状腺本来の組織を減らしたり、細胞の機能を抑えるため、十分な甲状腺ホルモンをつくることができなくなります。このため、不足する甲状腺ホルモンを補い、分泌を促すために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されるようになります。
※TSH=甲状腺を刺激してホルモンを分泌させる役割をもっています。しかし、甲状腺のがん細胞にも働きかけてしまうことが知られています。
ホルモン療法では、このTSHの分泌を抑えるように十分な量の甲状腺ホルモンを補います。
4抗がん剤治療(化学療法)
悪性リンパ腫や、ほかの治療では効果がないと考えられるような未分化がんでは、複数の抗がん剤を組み合わせた治療が行われます。
乳頭がんや濾胞がんでは手術によって効果が現れやすいので、抗がん剤治療はあまり行いません。放射性ヨードで効果が期待できない場合に、抗がん剤治療が検討されることがあります。
甲状腺がんの経過観察
治療後の体調や再発の有無を確認するために、定期的に通院し検査します。
特に、乳頭がんや濾胞がんでは、10~20年経ってから再発する可能性がありますので、長期の経過観察が必要になります。
甲状腺の全摘手術などによって甲状腺や副甲状腺の機能が低下している方は、
甲状腺ホルモン薬などを補わなければなりませんので、その処方期間に合わせた通院が必要となります。